自然が醸す 豊かな風味 上野村の「十石みそ」

ていねいに心を込めて

JA上野村 事業部 特産課課長 太崎 琢也さん

日本の食文化を支え、日本人の味として親しまれている「味噌」。ここ上野村には、昔ながらの伝統の味を守りながら、いまに伝える味噌があります。それが、上野村の特産品「十石みそ」です。

工場に足を踏み入れると、そこはお味噌の香りが広がりました。なんてホッとする良い香りなのでしょう。十石みそは、厳選された優良大豆と麦糀を原料とした、上野村の自慢の麦味噌です。
お米の栽培には不向きだったこの土地では、古くより麦を育てていました。生活の中から生まれた麦味噌は、上野村の美しい水と澄み切った空気の中で自然の力を借りて醸される特別なものです。
かつては、各家庭でつくられていた上野村の麦味噌。昔ながらの味にこだわって、今もなお天然醸造方法でつくり続けています。一年間じっくりゆっくり時間をかけて、上野村の自然と共に、美味しいお味噌に育っていくのです。

太崎琢也さんは、十石みそのスペシャリスト。十石みそのことが大好きなようです。今日も美味しいお味噌造りのために右へ左へ大忙しです。
同じ原料で同じ土地で作っても、その年々で出来上がるお味噌の味は違うそうです。
「自然の気候で熟成させるから、ワインのように毎年味が違うんです。このお味噌には、上野村の自然そのものがぎっしり詰っているんですよ。それを感じてもらいたいですね。」と、迷いのないきっぱりとした口調で教えてくれました。 手作業による袋詰め

無添加で酵母が生きているから熟成し続けるお味噌は、醗酵が進まないように要冷蔵での販売です。
だから販売先は限られてしまうけれど、その分風味はとびきり良く、本来の味噌の美味しさが楽しめます。特に村内の大豆を使った数量限定の十石みそは「群馬県故郷認定食品」にも認定されているこだわりの賜物。

そして驚いたのは、お味噌の袋詰めを人の手で行なっていること。地元のお母さん達が一つひとつ丁寧に、手際よく袋に詰めて行きます。理由を訪ねると、機械で詰めると大豆が潰れて風味が変わってしまうからとのこと。「粒の風味を味わう為には、昔ながらの手作業が一番なんですよ」
また、好みに合わせて選べるようにと粒を漉した練りタイプもあり、昔ながらの味を守りながら、時代の変化も取り入れる柔軟性が嬉しいところ。

これぞ家庭の味

お味噌汁に炒め物、お漬け物にと毎日の食卓を飾る上野村のお味噌。
キュウリにナスにヤーコンにと、上野村で採れたお野菜を漬け込んだ「十石みそ漬」も絶品。
中でも「唐辛子みそ」は、ピリッ辛さが後をひく一番人気。
昔ながらの味を再現しようと、レシピを聞いてまわったところ、各家庭にそれぞれの味があって作り方がこれと定まらなかったそう。そこで困った太崎さんは、祖母のレシピを再現するところからはじめました。その後改良を繰り返し、この唐辛子みそは完成したのです。
上野村のお漬け物はちょっぴり塩気が強め。それは寒い冬を迎えるこの土地の風土が生み出した昔ながらの味。おにぎりの具にしても良し、炒め物にしても良し、お酒のつまみにしても良し、いつでも食卓の片隅にちょこんと在ります。人々の生活の中に溶け込んだ、上野村を代表するお漬け物なのです。

うえのむらモノ語り TOP